『ウェブを進化させる人たち』12

湯川 物販の最も強いセールスポイントは、モノを販売する力だと一般的には思われていますが、実はたくさんあるバックエンドの仕事が重要なんですよね。そのバックエンドの部分を別の会社が受け持てば、ECサイトの皆さんは本来の強みであるフロントエンド、つまりモノを売るというところに専念できる。そういうバックエンドのサービスを提供する業者がでてきたということですね。

村松 そうですね。こうしたお店を作るのは簡単になりました。以前は月に5万円程度必要でしたが、今は300円くらいで作れます。それはそれでいいのですが、その先に見えないバックエンドのハードルがあるので、そのソリューションを手がけることにビジネスチャンスがあるとおもっています。…

(p.108)

村松氏がドロップシッピングに注目しているのはさすがと思いました。

最近は、簡単になったし、自分でやった方が自由にできるので、じゃあ自分でやろうかっていうことになりつつあるんだけど、実は…って感じで、こまごまとしたことにいろいろ時間を取られてしまうんですよね。それで、本来やりたかったことが100%できなかったり、発揮できないっていうケースがすごく多いんじゃないかなと思います。

なんか最近のミュージシャンとか物書きな人とか、そう。サイトの構築とかブログの更新とかしてないで作品作れよ!っていいたくなるような人がほんと多い。いや、それぞれ大切な宣伝商財であることは間違いないんだけど、なにも全部自分でやることはないだろう、人に任せられるところは任せればいいのに…ってところをこまごま自分でやっている人が多いなあと思うわけです。しかも、もちろんその道のプロじゃないから、クオリティーはそんなに高くない。あれちょっとイメージ違っちゃうなあ、なんて思うこともあるわけです。

自分でできることは確かに自由があって素晴らしい。でも、やらなければいけないこともたくさん出てくる。このやらなければならないことで、誰かに任しても大丈夫な部分は、誰かに任してもいいんじゃないか、と思います。それのサービスを提供してくれる業者っていうのは、消費者から見てもありがたいと思います。

ただし、最近私が知るところの傾向は、相手(ミュージシャンなり作家なり)があまり知識がないのをいいことに法外なマージンを請求したり、著作権などの権利関係のコントロールであまり好ましくない契約を結んでしまっったり、それらのリリースに統一性がなかったり(コンピュータ屋さんが無関心なところ)ていう人が多いってことです。もしかしてこの人(ミュージシャンなり作家なり)ダマされているんじゃないかって思うようなケースもあります。

それぞれの業種に特化した(業種事情を理解している)、バックエンドのサービスを提供する業者が出て来てくれるといいなあと思うのですが、そうなるにはまだまだ時間が必要ですかね…。


さて、この本、小見出しの付け方が素晴らしいのだけれど、「ニッチコンテンツに特化したバーティカルポータルの強み」なんてすごい、何の事だか全然わかりません(けなしているわけではない)! Buzz wordマジック。

そうですね、そろそろ、広く浅くから、狭く深くにシフトしてくれないと、検索とか、もう使えなくなってきてしまうと思います。すべてのものがポータルで揃っている、なんて、実はあんまり便利でなくて。“私の欲しいものが”すべてポータルで揃っている、っていうのなら別ですが。最大公約数な情報よ、さようなら。

湯川氏も村松氏も触れているが、ニッチコンテンツを検索するためのシステムは、そのシステムすらそのニッチさに対応すべくニッチでなければならない可能性もあります。そんなことが、コスト的に技術的にできるのか。そこでもまだ、旧態依然的リスティング広告的な広告の仕方が導入されるのか。興味深いです。自分としては、ニッチな検索技術っていうのを考えてみたいです。

その次の章では、今後発展するであろう「Web2.0」(インタビュー当時2006年10月)化とSMOを取り入れたマーケティングについて話をしています。AIDMの法則は変わりつつあるのではないか、と。

松村 AIDMAと言われていたプロセスは変化しています。検索して情報を交換し合い、モノを買った後にまた情報を提供して、という今までになかったプロセスが割り込んできています。

これ、1)検索して情報を交換し合い、2)モノを買った後にまた情報を提供、ですけど、両方やる人と、どっちか落ちる人といるような気がします。法則化されるのはまだちょっと伝播が足りないかなーと。しかし、これを完璧に消費者行動サイクルに組み込むように、商品を売る側がインフラ整備を手伝うなどして後押しして挙げると、また、魅力的な市場が開拓されるのではないでしょうか。消費者にとっても、自分達の声が反映されて商品ができるのはよいことだと思います。

しかし、情報はナマモノかつイキモノ、好ましいように立ち回ってくれないってところがやっかいなんですけどね…。